ビル・エヴァンス『Bill Evans at Town Hall Volume One』

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先週聴いた『I Will Say Goodbye』は本当に美しくてその後も何度も聴いていますが、そこから11年遡ってこちらは66年にニューヨークのタウンホールで行われた公演を記録した作品。Vol.1とタイトルにありますが、Vol.2が存在しないという作品です。

 

ベースはチャック・イスラエルの時代。楽曲構成にもよりますが、若干ビル・エヴァンスのソロ色が濃いような印象を受けました。2週間前に亡くなった父親に捧げるソロ演奏が収められている影響もありますが、本編の方はトリオの演奏が左程目立たないように感じます。少し静かめの選曲なのかもしれません。

 

一方、ボーナストラックの方は比較的トリオの演奏らしい局面が見受けられます。ビル・エヴァンスの演奏を聴いていて結構好きなのはドラム・ソロとの掛け合いの中でビル・エヴァンスの短いピアノ・フレーズのブレイクが入るパートなんですが、ここでも「Beautiful Love」と「One For Helen」でその展開が味わえます。短い中で閃きのように音を奏でる。そのブレイクの仕方が結構独特なので、センスが爆発していて好きなんですね。

 

しかし、ほとんど作品に外れがない。ビル・エヴァンスは素晴らしいです。

ラヴ・コミッティー『Love Committee』

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こちらは山下達郎のサンデーソングブックで紹介されたスウィート・ソウル特集がきっかけで入手したタイトル。1980年リリースのラヴ・コミッティー2ndです。紹介された曲は「I Wanna Make Love To You」という楽曲。

 

全体的に音が温かい感じがしました。ジャズにしろソウルにしろ、年齢を重ねてくるとこうした耳に優しい音楽が心地よいですね。メンバーのロン・タイソンという方はこの後テンプテーションズにも参加しているそうです。

 

このラヴ・コミッティーというグループはどうもこの2ndで活動を休止してしまったようですが、この前に出ている1stの『Low & Order』という作品が良さそうですので、いずれこちらも聴いてみることにしたいと思います。忘れてしまうのでメモしておかないと。

ビル・エヴァンス『I Will Say Goodbye』

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晩年のビル・エヴァンスの作品の中でもこの作品と次の『You Must Believe in Spring』はとても良い作品だといわれていましたので、まずはこちらを聴いてみました。77年の作品。

 

非常に美しいし、強い音がしていますね。最近になってもこれまで入手してきたビル・エヴァンスの作品を聴き返していますが、この作品もまた聴きたくなる魅力を備えていると思います。

 

一体何がいいんだろう。言葉になかなかできませんが、晩年に向けて様々な悲しい出来事が積み上がっていったにも関わらず、作品にはこうした美しさを表現できる。その凄みというのは決して誰もが到達できるものではありませんが、そんなことを気にしなくとも音楽として体に心地良く、美しく、かつ躍動感を持って入ってくる。本当にここへ来て出会えて良かったと思えるアーティストです。

ロジャー・ジョセフ・マニングJr.『Glamping』

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昨日聴いたリカリッシュ・カルテットを検索していたら、ロジャー・マニングのEPが2018年に出ていたことを知りました。最近は海外アーティストの国内盤がなかなかリリースされなくなったので、発売されたことすら見逃していましたが、やはりここは聴かねばと思い入手。この時点で10年ぶりの新作リリースだそうです。

 

これを機に過去のロジャー・マニングの作品も聴き返してみましたが、やはり圧倒的に1stの楽曲が良くて、2ndはそこまで辿り着いていないと思います。1stアルバムは『Solid State Warrior』というタイトルで06年にリリースされましたが、今ではタイトルを『Land of Pure Imagination』と変えて、若干楽曲を足してリリースされているようです。この作品は本当に圧倒的にいい。

 

ロジャー・マニングの場合はアップテンポな曲よりもスローでメロウな楽曲の方がその真価を発揮するような気がしますが、いずれにせよメロディがとてつもなく綺麗で合わせるコードや転調も美しいので、楽曲によっては昇天ものです。

 

その片鱗がこのEPにも若干見て取れますが、1stの頃の煌めきまではまだ届いていない。ただ2ndで少しノイジーで硬めの音になったのに比べると、多少ポップさが戻って来ている気がします。

 

このリリースが現在のリカリッシュ・カルテットの活動に繋がったんだとすれば、それはそれでいいことだし、再度創作活動が活発化して元ジェリーフィッシュの旧友と共に歩き始めたことは嬉しい限りです。このEPでも一部楽曲にジェイソン・フォークナーが参加していますね。

 

ボーナストラックで収録されているライブ音源もとても良い演奏ですので、是非末長く活動していって欲しいと願っています。

リカリッシュ・カルテット『Threesome Vol.2』

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ロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアを中心とした後期ジェリーフィッシュの3人が再集結したリカリッシュ・カルテットの2作目のEPが出ていました。リリースされたことを知りませんでしたので、早速入手して聴いてみました。

 

ドPopですね。Vol.1の方も充分ポップでしたが、そちらではご本人たちが敬愛するバンドに音を寄せていったような趣がありましたが、このVol.2では自ら往年のジェリーフィッシュサウンドに近づけていっているかのようです。

 

本人なんだから当たり前かもしれませんが、まるでセルフカバーをしているかのように聴こえます。感覚的にはジェリーフィッシュの2ndにしてラストアルバム『Spilt Milk』に近い。

 

そうなってくると、オリジナル・メンバーのアンディ・スターマーの不在がむしろ浮き彫りになってしまうんですが、アンディの復活を残りのメンバーが両手を広げて待っているかのような、そんなメッセージを世の中に送っているかのような、邪推かもしれませんが、そんな気にさせる音楽でした。

 

スティーリー・ダン『Aja VS The Scam』disc 2

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2枚目は『The Royal Scam』再現の後半から始まります。ここでも夢のような演奏が繰り広げられますが、一連のアルバム再現が終了した後に、様々な時期の楽曲が演奏されていきます。実はそこが楽しい。

 

とにかく二人がよく喋る。ドナルド・フェイゲンは曲間にMCをよく入れますが、ウォルター・ベッカーもバンド紹介で本当によく喋っている。スティーリー・ダンのアルバムを聴いているだけでは、この二人がこんなにもコミュニカティブであるとは想像がつかないでしょう。どちらかというとクールな印象がありますので。

 

でも90年代に活動を再開してからのライブ音源や映像などを観ていると、お二人は本当に仲が良さそうで、ユーモアに溢れた会話をひっきりなしにしている印象があります。やっぱりパートナーというものは大事なんですね。再集結したYMOもそうでしたが、皆歳をとって仲間とのエゴも消えてただただ仲良く話し続ける。そんな関係性が垣間見えて、とてもいい気分になるライブでした。

 

ラストの「Pretzel Logic」ではスティーヴ・ウィンウッドがゲストで参加してボーカルやオルガンを演奏するんですが、これはそれなりに大事だと思います。ただ、ゲストを紹介するくだりが収録されていないので、盛り上がりの度合いが分からないのがちょっと残念でした。

スティーリー・ダン『Aja VS The Scam』disc 1

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スティーリー・ダンの2009年のボストンでのライブを収録したタイトルがリリースされました。この頃のライブはアルバム全曲を演奏したもので、ここでは『Aja』と『The Royal Scam』が再現されています。これは素晴らしい。

 

先日聴いた90年代のライブもとても良かったんですが、ここでのアルバム再現ライブはそれに輪をかけていいですね。そもそも『The Royal Scam』や『Aja』『Gaucho』といったアルバムの頃は既にスティーリー・ダンはバンド形態をなしていなかったので、ライブ自体が行われていません。それがこうして世紀を跨いで再現されるわけですので、その場に居合わせた人たちはさぞかし感動したんだと思います。

 

冨田恵一が94年のライブで普段は飛ばして聴いていた「ディーコン・ブルース」みたいな曲が改めていい曲であることを再認識した、といった話をしていましたが、確かに『Aja』の収録曲はタイトル曲と「Peg」以外は比較的地味に聴こえてしまいます。それがライブではグルーヴが加わって躍動感のある音になっていて、とても良い。

 

『The Royal Scam』の方は元々グルーヴィーでかつ複雑な楽曲ですので、オリジナルを聴いているだけでも引き込まれてしまいますが、これをライブで全曲再現するなんて・・。マニアックだし美しい。これ、夢のようですね。まだ前半だけですが、満足度はかなり高いです。