ピーター・ガブリエル「So」

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86年発表の5作目。これは決定盤である。当時あまりの変貌ぶりに周囲は困惑していたが、本人曰く「自分の音楽のベースには常にソウル・ミュージックがあった」とのコメントで妙に納得した。それまでピーター・ガブリエルはゲートエコーの怖い人だったので、こうして表舞台に出てきてメジャーになったのは非常に喜ばしい出来事だった。

何といってもPVだろう。「スレッジハンマー」の衝撃。当時ピーター・バラカンのポッパーズMTVで感動的に紹介され、その緻密さに驚いた。MTVというとマイケル・ジャクソンで語られることが多いが、我々にとってはトーキング・ヘッズでありゴドリー&クリームであり、ピーター・ガブリエルであった。その後の「ビッグ・タイム」も非常にかっこいい映像でとても印象に残っている。基本的に様々な断片映像の集積なのだが、何より音楽が好きな人が作ったと思われる絶妙なセンスが気に入った。朝青龍が謝罪会見で「相撲が大好きですから」とコメントしたのと同様、まず何よりも好きであることが大事で、その他はあまり重要ではなかったりする。

ベストトラックは1曲目の「レッド・レイン」だ。イントロの緻密なハイハットワークがスチュアート・コープランドのものだと今回初めて知って単純に嬉しかった。リマスター再発に際してそれまでボーナストラック扱いだった曲が正式に含まれ曲順が少し変わっている。

これ以降、ピーター・ガブリエルがこの路線を歩むことはなく、次作からは元の暗い荘厳な世界に戻っているため余計に本作が金字塔のように輝く。