Todd Rundgren 『A Cappella』

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トッド・ラングレンの85年作のこのアルバムだけは紙ジャケリマスター再発を待ってずっと買わずにいたが、一向に出ないので遂に中古で買ってしまった。300円だもんな。

ベアズヴィルからワーナーに移籍しての第1弾は、自らの声だけで多重録音して作ったアカペラのアルバムだった。(シンセサイザーの音も入ってはいるが。)常に何かしらのコンセプトを掲げて人のやらないことをやる。この時期はそれがアカペラだったということだが、そうした試みよりも残っていくのは曲のクオリティだったりする。

『Pretending to Care』が圧倒的にいい曲。『Johnee Jingo』『Hodja』『Mighty Love』『Honest Work』などあまり凝ってない曲に揺さぶられるものがある。この後アカペラ・ツアーなるものも行われ来日もしたが、当時の音源も今では普通に出回っている。そこではコーラス隊を引き連れてまさにアカペラをやる訳だが、出自がフィラデルフィア・ソウルであることがダイレクトに良い方向に出ていた時期だったんだなあと今では考える。

この後『Nearly Human』での生志向になってしばらく後失速していく訳だが、今度出る『Arena』を含めた昨今の原点回帰は開き直った感じがしてとても良い。「好きなもんは好きなんだよ!」と言われているようで、この自然体加減が昨今の風潮なんだろう。(特にベテランの。)無理して背伸びしないでも体に染み付いた力が自然と滲み出てしまうので、いいもんはいいんだよね。