大塚英志+東浩紀『リアルのゆくえ』

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東浩紀は『郵便的不安たち』で90年代の姿を見事に言語化していることに衝撃を受けて以来のファンだが、今回はひと世代上の大塚英志との対談本。全編にわたって繰り広げられる喧嘩にも似たやりとりがスリルを増している。

大塚英志の執拗な問いかけに対して徹底的にクールに返す東浩紀の姿が印象的。ここまで冷静に対処できる人はそうはいないだろう。議論を諦めない大塚英志も凄いと思う。

東浩紀の言葉を見ていくと、今自分たちは100年単位での時代の変わり目にいるということを意識させられる。この議論を単純な世代間闘争に読まぬよう、気をつけて見ていったつもりだが、やっぱり喧嘩の迫力にどうしても目がいってしまう。これは仕方ない。

とはいえ、派遣社員が混在する職場を目の当たりにしている毎日では、彼らの所作が必要以上に攻撃的だったりする現実を秋葉原の事件に重ねて考えてしまう。『蟹工船』が本屋の目立つところに陳列してある背景にもこうした風潮があることを改めて知ることもできた。

で、考え方が異なる者同士が議論する先に公共性が生まれるかというと、少なくとも会社組織ではそうせざるを得ないので、日々議論の繰り返しだ。そこに対して安易な空気読みを繰り返す軽めな人は議論の主題はずらすし、刹那的な行動で結論を感情論で終わらせたりする。ここは苛立つところで、そういう意味では大塚英志の方が一瞬まともに見える。

でも東浩紀の諦めの方が現実的だな。