坂本龍一『/05』

f:id:tyunne:20181012221201j:plain

ここ最近のアマゾンのランキングを見る限り、ツアーの影響からかピアノアルバムが上位に登場している。先日の『/04』に続いてこちらも中古屋で見つけた。1000円かな。

収録曲はお馴染みの曲ばかり。『Tibetan Dance』も『Energy Flow』も『The Last Emperor』も入っている。ツアー音源やDVD等を見ていれば大体察しがつく曲ばかりで、アレンジもほぼ同等。ということは04年、05年以降左程坂本龍一の音楽はことピアノにおいては変わっていないことになる。『Out Of Noise』が異質なだけだ。

ピアノでのセルフカバーが何を意味するか。『BTTB』の頃に言っていた原点回帰でははっきりしなかったが、無人ピアノとのセッションが恐らく鍵を握る。この面白さは映像でないと分かりにくいが、単にライブ演奏での肉体性や偶然性というより「データとの共演」による自分自身のコピー、再生産可能な複製芸術の無限性、無限ループと更新、一回性とデータ化、など色々と思いつく。すなわち、データ化した演奏はそれ自体商品にできる訳で、それを再現するのではなく音を重ねてセッションしていく。しかしそれもデータ化されていくという無限性。どこが終わりか分からない。「チェーン・ミュージック」の取り組みなんかもそうだが、終わりがない訳だ。締め切りがあればそこで終了となるが、無限に発展する可能性を持っていて、それはIT化によって可能となった制作手法と考えることも可能。でも佇まいはあくまでアナログ、という面白さ。単純な話だが、色々考えると応用が効きそうで、これからの流れに思いを馳せることもできそうだ。

後は単純に心地よい、という面もあるね。