あがた森魚『佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど』

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21世紀に入ってから名作しか作っていないあがた森魚の物凄いタイトルの01年リリース作品。一体何のことなのかと思ったら、小樽の小学校で担任だった先生が給食で山羊のミルクを無理矢理飲ませようとして、抵抗して咄嗟に手に噛み付いてしまったという超個人的なエピソードを歌ったものだった。
1曲目のタイトル曲はTOKYO NO.1 SOUL SETBIKKEの語りかけラップから始まる。歌詞内容は細野さんがどうしたとか、慶一君がどうのとか、これまでの活動を具体的なつぶやきで綴るもので、これも個人的。この内容で1枚アルバムを作ってしまうところが凄い。あがた森魚という人は妄想世界で壮大な物語を吐き出してしまう迫力を持っているが、今回は事実に基づいたものであるところが凄い。何事なのか、という内容だが、非常にノスタルジックであることは間違いない。『山羊のミルクは獣くさいオイラの願いは照れくさい』という2曲目は先程の手を噛んだエピソードが歌になっているが、これも聴いていて思わず笑ってしまうくらい具体的だ。
でも全体的には的確な音で彩られたいい曲の多いアルバムで、テーマから想起される特異さは音の奥行きでかき消されてしまうモダンな仕上がり。久保田麻琴HARCO、鈴木惣一郎などのアレンジできっちり作られた新しくも懐かしい音づくりは非常に好感が持てる。松田聖子の『風立ちぬ』のカバーあり。