出たっ!8年ぶりの新作!まさかサントラで復活するとは思わなかった。
01年の『Lovebeat』以降、ベストアルバムが出た以外は音沙汰のなかった砂原良徳の新作は、生楽器を多く使ったある種有機的な音像となって届けられた。映画のサントラなので退屈かと思っていたが、聴いてみるとこれが非常に良い。元々インストのアーティストなので違和感がないのかもしれないが、映画音楽ということで対象が存在するものに対して合わせていくことが逆に密室性の排除に繋がっているような気がする。開かれた音が多い。
ウッドベースや生ドラム、ピアノの音などがエレクトロニカ通過後のデジタルノイズビートに乗せて精緻に進んでいく曲群の在り方は非常にタイトで、かつポップスとして十分成立している佇まいを持つ。ジャケットは海の中でピアノを弾いているのかと思っていたが、映画のシーンなのか、船の写真だった。砂原良徳=飛行機という印象が強かったので、海に出るイメージは新鮮だ。これはWORLD HAPPINESSがまた楽しみになりましたね。
メインテーマ曲と思しき『Sunset Blue』はリズムの作り方がデヴィッド・シルヴィアンのようでとても美しい。本人自ら「手癖」と解説しているのは『TAKE OFF AND LANDING』での印象的な1曲目のビートの刻み方を差すのか。それとも和音か。
ラストの『Deadly Lovely』は『ピンポン』での『夢際のラスト・ボーイ』以来の元スーパーカー、ナカコーとの合作。これも01年以来ということになる訳だが、驚く程時空を超えて繋がっている。
6曲目の『Float』で出てくる風のような電子音は何かに似ていると思っていたらYMO『BGM』での『Happy End』間奏部の音だった。続く『Green Pattern』は細野晴臣の『フィルハーモニー』のようで、ここでもYMOフェイクは盛り沢山だ。かっこいいなあ。途中の転調も既聴感があるが思い出せない。でも確実に81年前後の雰囲気を正当に踏襲している気がする。