まずはYMOのことから書いてみよう。
元々最近は生楽器主体で演奏したい、という意向が強く、スペインのライブやマキシシングルでも生楽器の音が目立ち始めてはいたが、今回はそれを実現した形。それにしてもオープニングでビートルズの『Hello Goodbye』をやるとは思わなかった。これは意表を突かれました。来月は怒濤のリマスター再発でもあり、今ここでこの曲をやる意味はそれなりにあるんだろうが、『Day Tripper』や『All You Need Is Love』、そして高橋幸宏の度重なるカバーでお馴染みとはいえ、ここでビートルズの曲というのはいい意味で裏切られた。
それから何といっても『千のナイフ』。イントロのBGMバージョンが聴こえてきた時には思わず歓声をあげた。演奏もタイトこの上なく、物凄くかっこいい。渡辺香津美が小山田圭吾に替わってギターが鳴り響く様は現役感漲るもので、単なるリバイバルというには余りに充実している演奏。これは良いものを見せてもらった。
そしてアンコールでの『ファイアークラッカー』。ここで木琴を叩く細野晴臣の姿はティンパンアレイ後期、すなわちYMO結成前夜を彷彿とさせるようで、単なるサービスに終わらない姿勢を感じさせた。いやあ、やってくれました。とても良いライブだったと思います。
次に触れたいのは砂原良徳。これも良かった!二人だけでステージに立つシンプルな構成だったが、スクリーンの映像と相俟って非常にインパクトの強いライブを見せてくれた。『Lovebeat』からの曲が中心の選曲だったが、この曲をこの形式でこの場でやり切ってしまうというのはある意味凄い。完全にインドア向きの音楽で派手なアクションも一切ないのでライブである必然性があるのかどうか疑問だが、問答無用!音がかっこいい!周囲では引いている人もいたが、『Lovebeat』が始まると、そのグルーヴに思わず立って体が揺れ出す人も出始めた。クールでいい演奏だったと思う。最高ですね。
史上初、YMOとムーンライダーズが同じステージに立つ、ということでムーンラーダーズがどういう演奏をするのか見物だったが、彼等なりの売れ線を意識した選曲で、元気な演奏だった。でもやっぱり白眉は鈴木博文がボーカルをとった『くれない埠頭』。歌がうまい!鈴木慶一がうまくない、という意味ではないが、弟のボーカルの方が憂いを帯びて進化している感じがする。この「憂い」がもう少し全面化していても良かったんじゃないだろうか。ムーンライダーズには様々な側面があるので、今回はその中の元気な姿がクローズアップされたに過ぎない。
ライブ中一番盛り上がったのはスチャダラパーだったが、相対性理論の人気には少し驚いた。何とYMOを見ずに帰ってしまう人もいたくらいで、これは完全に世代の差を感じる。正直言って騒ぎ過ぎだし、演奏を聴いても左程惹かれるものがなかったのが残念だったが、ブランド先行で盛り上がる観衆に違和感を覚えた。
ということで、今回は念願の家族参戦。雨も降らず天気も曇りで、最後には地震のオマケ付き、ということで昨年同様天候に恵まれたいいイベントだった。娘を何度も肩車したので首が痛い。子供達もスチャダラパーではノッてたし、『Rydeen79/07』は「これ知ってる」というコメントで微笑ましかったが、終始ゲームに興じていたのは残念。やっぱそんなもんかな。来年の家族参戦はちょっと難しそうな雰囲気だ。