ムーンライダーズ『Tokyo 7』

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ムーンライダーズの新譜がとてもいい。本人達も自信作のようだが、実際ミニアルバムの6曲を含めて20曲近くを瞬く間に録音している勢いは、80年代初頭、あるいは20周年の頃の仕事量に匹敵する。

とにかくギターがよく鳴っている。その上、全体の印象は軽やかだ。前作までにあった多少の重々しさがなくなって、吹っ切れている印象がある。

タイトルは元々はメンバーのメーリングリストからとった名称だそうだが、自身で深読みしている中に「ムーンライダーズとしての人格」という言葉が出てきた。メンバー6人以外に、ムーンライダーズという第7の人格が存在して、そこを意識すると、例えバラバラに作業していても自然と統一感が出てくる、といった話。

20周年の頃の『Bizarre Music For You』はとても好きなアルバムだが、ここでの第7人格はあえて意識してやっていた雰囲気があった。しかし、今回はバンドで数多くのライブを日常的にこなしている最中の録音、ということもあり、第7人格は自然に出ているように思う。

肝心の内容の方はいい曲が目白押しだが、とりあえず1曲目の『タブラ・ラサ』がアコギから始まるところで既にいい!ミニアルバムの『Come Up』も含めて、ここ最近のかしぶち哲郎の作風は少し変わってきているように感じる。

勢いよく何曲か続いていったところで『Small Box』というスローでいい曲が中盤に登場する。こうした「単純にいい曲」が沢山入っているアルバムは久々なんじゃないだろうか。『夕暮れのUFO、明け方のJET、真昼のバタフライ』も名曲。

後半、ラス前の『旅のYokan』は白井良明の曲なので、最近の傾向からして元気な曲かと思ったらいい意味で裏切られた。コズミックな雰囲気の静かなポップスで、これも非常にいい曲。

最後の『6つの来し方行く末』では誕生月順に6人がそれぞれメインボーカルをとる感動的な曲。もうこれで終わってもいいくらいの名盤を作ってくれた!でもこんなに爽やかで元気なので、これからもずっといい状態が続いていきそうな期待と予感も抱かせる、それくらい鉄板のアルバムだ。