デヴィッド・シルヴィアン『Manafon』

f:id:tyunne:20181014090107j:plain

やっと手にしたデヴィッド・シルヴィアンの新作。前作の『Blemish』が相当に難解な作品だったので、おっかなくて手を伸ばせずにいた。まあ金もなかったのだが・・。

即興演奏にボーカルを乗せていくスタイルは前作と変わらない。でも本作はアコースティックな楽器が主体で、意外とメロディも浮き上がってくる作りなので、むしろ前々作の『Dead Bees on a Cake』を思い出した。JAPANや初期のソロ作のようなポップさはないが、これはこれでなかなかに聴ける。坂本龍一も『Out of Noise』で「音」を主体に作品を構築していたので、こうした音の断片を構成した音楽に耳が慣れたせいもあるかもしれない。でもやっぱり先日聴き直した『Blemish』はいいとは思えなかったので、それに比較すると今回の方が色々な音があって、かつ生楽器が聴こえてくるので楽しく温かい。ジャケットのように森の中にいるようだ。細野晴臣のインストにも近いかな。こちらの方がより先鋭的ではあるが。

しかし50を越えてここに到達するなんてのは何たることだ。商業主義と対極にいることが許されるのは昔とった杵柄があるからか。まあデヴィッド・シルヴィアンでなければ聴かないだろう。どうするつもりなんだろう、これから。

したり顔して「これがいいんだ」等と言うつもりはないが、ポップ・ミュージックのフィールドでここまでやるのは他に類を見ない。静謐というより鋭利。ノイズが入ってくると特にそう感じる。