ムーンライダーズ『dis-covered』

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やった・・。遂に見つけた!ムーンライダーズ98年リリースの『月面讃歌』セルフ・カバー・アルバム。探しましたよ10年間。この年末はこんなのばっかりだな。アニー・ハズラム、ベアズヴィル・ボックスに続いて、密かに快挙!ディスクユニオンに本当にサクッと置かれていた。状態は左程良くないが1800円ですよ。ネット上では10,000円前後ですからね。再発まで待とうとあきらめていたが、本当に良かった。

『月面讃歌』はすべての曲を外部のプロデューサーに委ねたアルバム。ムーンラーダーズは6人のメンバーがプロデュース集団だから、それをあえて外に出すというコンセプトがまずは新鮮だった。でも自分達のバージョンも勿論用意してあって、そちらにも自信があるから発売後にひっそりとセルフ・カバー集をリリースした。当時は「どうせ曲は同じだから」と見逃していたが、これが失敗。廃盤後めったに見かけることはなくなった。一度、mixiのコミュニティにも書き込んで「図書館で聴けますよ」とアドバイスを頂いたので国会図書館で聴いたりもしていた。ああ、やっぱりいいなあ、と思いを強くしてそれからでも2年ですよ。長い旅だなあ。

感想はというとやっぱりいいんだ。今年の『Tokyo7』も最高だったが、元気なムーンライダーズがたっぷり味わえる。当時のシングルとして『恋人が眠ったあとに唄う歌』と『Sweet Bitter Candy』がリリースされていたが、そこで再録されていた『酔いどれダンスミュージック』と『月夜のドライブ』が異常にカッコ良かったので期待はしていたが、このローファイ加減がたまらなくいい!逆に本編の方でいかに音をいじっていたかがよく分かる。

『Sweet Bitter Candy』は奥田民生のブレイン、Dr.ストレンジラヴの根岸孝旨が思いっきりギターサウンドにしていて気持ちいいし、『服を脱いで、僕のために』では真心ブラザーズ桜井秀俊TLCの『Waterfall』そっくりのゴキゲンなアレンジで名作を作り出していてとても好きだった。

でも過剰にうるさいアレンジやサンプリング多用で曲の魅力を殺していたものもあったように思う。元々うるさかった『Lost Time』なんかは実は原曲に忠実だったんだな。でも『幸せの場所』から『海辺のベンチ、鳥と夕陽』までは原曲の方がいいぞ。全体的にクオリティは当然のように高く、これでいって全く問題なかったと思うが、そこにコンセプトを被せることで歴史を作った訳だ。単なる「いいアルバム」を作ることだけでは満足できなかったんだろう。当時はソニーに移籍して「絶対にムーンライダーズを売る!」という意識で担当者も臨んだというようなエピソードも目にしたが、『Sweet Bitter Candy』のシングルで奥田民生をゲストに呼んだのもその現れだろう。PVにも出てたよなあ。それでも売れない。

『恋人が眠ったあとに唄う歌』では作詞に曽我部恵一を迎えていて、ここがスタート地点だったことに感慨を覚える。実際は30周年記念コンサートからな訳だが。『服を脱いで、僕のために』はやっぱり桜井秀俊のバージョンの方がいいな。本当にこの人は才人だと思う。これをこう変えるか!原曲に『月面讃歌』のフレーズが入っていたのは驚いた。そういえばこの曲だけはセルフ・プロデュースだったよなあ。

ということで一足早いクリスマス・プレゼントをもらったような気持ちです。