『THE FINAL TAPES はちみつぱいLIVE BOX 1972-1974』

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臨時収入が入ったので、また10年後悔しないために、はちみつぱいのLive9枚組ボックスを購入。これで幸せな年末年始を手に入れた。

はちみつぱいムーンライダーズの前身バンドだが、70年代初期の活動中にアルバム1枚、シングル1枚しか出していない。そのアルバム『センチメンタル通り』はムーンライダーズ10周年の頃のライヴヴィデオで『塀の上で』を耳にして以来、その余りの哀愁の鋭さに思わず手を伸ばしたが、楽曲はザ・バンドのような風情と初期ムーンライダーズにあるようなほのぼのとした感じが混ざったような当時の新人らしからぬ風格を備えていた。

同じく10周年の頃に出た『The Worst of Moonriders』には冒頭に『こうもりの飛ぶ頃』が収録されていて、その長尺のジャム・セッションのような曲にやられた。そうした伝説が思い切り封印されている恐ろしいボックス。これもきっと買わずにスルーしてしまうとなくなった時に後悔して探し続けることが予想される。ということで今回手を伸ばした訳だ。

最近のボックスものは紙ジャケ仕様のものが多いが、こちらはコストセーブのためかプラケース仕様。逆にそれが9枚もあるのでボックスとしては物凄いボリューム感だ。

 

ということで例によって誰も臨んでないのに全ディスクレビューといこう。1枚目は結成初期の1972年音源。もう既に完成度が高い。『塀の上で』の哀愁は無敵だ。歌詞がちょっと違うんですね。はちみつぱいの特筆すべきはその老成具合にあると思う。初期ムーンライダーズが声質と無国籍サウンドのせいもあって若干幼く感じるのに比べて、その世界観は新人離れしていた感がある。要するに最初から渋過ぎるのだ。ムーンライダーズゼロ年代以降はインプロヴィゼーションの比率が高くなり、先祖帰りしてきたような感があるが、それは最初から完成されていたんだ。

古い音源なのでヒスノイズも多いが、ドラムもドカドカ鳴っていて臨場感もあり非常に良い。『こうもりの飛ぶ頃』はどれも10分以上あるが、このあたりがグレイトフル・デッドに例えられる所以だろう。この要素は再結成時のライヴ盤以外では味わえなかった雰囲気だ。武川雅寛のバイオリンはザッパのマザーズ・オブ・インベンションみたいな荒々しい雰囲気を醸し出している。これは確かにはっぴいえんどとは違うな。音源が余り世に出ていなかったので、ややもすると「日本のロック」として一緒くたに語られることも多かったが、ちょっと違う。はっぴいえんどが楽曲中心なのに対して、はちみつぱいは演奏主体、そこに叙情性が漂っている。そこから約40年弱。いまだにバンドが形を変えて続いていることはやっぱり奇跡だと思う。