73年12月の渋谷ジァンジァンでのライブ。フル収録なのか、74分近くもたっぷりと入っている。若干音は籠り気味だが、演奏は余裕たっぷりでひとつコンサートを見たような感覚を与えてくれる。
あがた森魚に提供した『キネマ館に雨が降る』の自演や、かしぶち哲郎の未発表曲『自由なメロディ』など聴きどころは多い。中盤にはデビュー間もない南佳孝が参加してソロアルバムからの曲を披露。ラテンフレーヴァーのイントロは『紅の翼』のようだ。聴く限りまだあの粘っこいボーカルスタイルは完成していないように聴こえる。
ジャムバンドのような局面も多くて、『サイケデリック・タイムス』なんかはやはりグレイトフル・デッドのようだが、このあたりの煌めくインプロと後の『火の玉ボーイ』に繋がっていくような洒脱さが混在した、かといって混沌ではなく安定したステージだ。聴いていていい気分になる。
思えば『センチメンタル通り』という唯一のアルバムは、これらの中から曲としての一部分を切り取ったものなんだな。多面的な活動の中から整理してパッケージされたアルバムは勿論いいが、長尺の曲は収録されない訳で、この辺が今回の再発で明らかになった訳だ。
ザッパの『アンクル・ミート』が聴きたくなってきた。