最後はディスクユニオンの特典ディスク。音質面で収録が見送られた73年渋谷ジァンジァンでのライブだ。確かに音は悪い。でも今回のボックスはここまで聴いて完了でしょう。合計10枚。物凄いボリュームだ。
聴いてみて思うのは、既にあちこちで言われている通り、『センチメンタル通り』だけでは分からなかったジャム・バンドとしての側面が明らかになったことと、はちみつぱいから初期ムーンライダーズに至る空白を埋める音源としてその変遷が分かること。
ここ最近、CDがめっきり売れなくなって、逆にライブの収益が上がってきているという話がある。海外のプロモーター会社ライブネーションがマドンナと契約したのが2007年。その後、確実にパッケージからライブへ音楽の主軸が移りつつある。海外で顕著なこの傾向は日本でも明らかで、音楽配信の伸びが頭打ちになる中、野外フェスの盛り上がりぶりは一向に陰りを見せない。はちみつぱいもパッケージメディアで当時切り取られた音源では表しきれない魅力をライブで振りまいていた訳で、こうした音源が30年以上経ってから発掘されて改めてその実像が分かるという事実。一回性の刹那が今の時代に合ってきているからこその傾向かもしれないが、昔から構造は変わらない。ただスポットの当たり方が違うだけだ。
こんな風にきちんと発掘されるグループは少数かもしれないが、こういったものにこそ配信が適しているように思う。坂本龍一の昨年のライブがすべて翌日にiTUNESで配信されたのも同じ流れだ。体験して残していく。その疑似体験が次の体験を誘発する、というサイクル。と、まあそんなことを考えた。アーカイブというのは寝かせて価値が出るような側面もあるから一概に言えないが、何とかそんな手法で音楽業界を盛り上げていって欲しい。
でも本当に発掘されて良かった。いい曲、いい演奏が多いもの。『大寒町』なんて年末年始に合いますね。時間があると思いを馳せることができるから休暇は好きだ。さあ、次、次。