フランク・ザッパ「Philly '76」

f:id:tyunne:20181014114242j:plain

レコード・コレクターズ曰く、ジョージ・クリントンと共に頭の中に象を飼っているフランク・ザッパの新作はライブ丸ごと収録シリーズ2枚組。例によってサイト限定盤だがディスク・ユニオンで扱うので少し値が張ったが満を持して購入。何つっても面子が凄い。

ドラムはテリー・ボジオ、ベースはパトリック・オハーン、キーボードはエディ・ジョブソン、ギターはレイ・ホワイト、そして『スリープ・ダート』の正規盤で追加されたボーカルのビアンカ、というメンバー。コンパクトだが恐ろしい程タイトな演奏を聴かせる。一部を除いて『ズート・アリュアーズ』のジャケットに映っているメンバーだ。時期的には唯一の来日公演と『シーク・ヤブーティ』の頃のメンバーとの間に位置するバンドで、この時期の音源で通したアルバムは初めて。70年代のザッパは本当に脂が乗り切った演奏を聴かせる。冒頭の『Stink Foot』で既にドラマチックだ。

少ない人数なのにボーカルをとれるメンバーが多いのでコーラスも厚い。選曲も70年代初頭の曲と後半の曲が混ざっていて新鮮だ。70年代後半に目立ってくる演劇的要素が強い曲もまだ出てきていないので、曲の長さも比較的短くてコンパクト。その分凝縮されている。ビアンカのボーカルで聴く『Dirty Love』『You Didn't Try To Call Me』なんて初めて聴いた。R&Bみたいで面白い。

『Titties & Beer』はまだ未完成なのか別名で収録されている。大阪公演で強烈な印象を残す『Black Napkins』はここではビアンカのボーカルが入って柔らかく聴こえる。その後はエディ・ジョブソンのバイオリンかな。この曲はザッパのギターで通した方が鮮烈でいいような気がするが、これはこれで緩くていい感じだ。『Advance Romance』ではパトリック・オハーンがソロをとるが、この時期のザッパは信頼できるメンバーに支えられていて、ある程度演奏を任せるパートも多いように感じられる。多人数のバンドをまとめあげてカリスマ性で指示するというよりも、個々のスキルを際立たせるといったイメージ。おかげで本人のソロも存分に聴けるという訳だ。