ロバート・ワイアット『クックーランド』

f:id:tyunne:20181014140252j:plain

去年の3月も沢山CDを買っていたが、何でだろうと思っていたら期末の決算期なんですね。ついついユニオンに足を伸ばしてしまうが、余計なものには不思議と手が伸びなくなった。一通り売場を眺めたが、さすがに自分の好きなものはほとんど手にしてしまっていて、これ以上過剰に収集するのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。もうロック・ポップス関連には新しいものは左程ないので(と言ってもまだ買い残しはありますが・・)、これからはジャズやソウルの方に入っていこうかと思う今日この頃です。

03年リリース。75分の大作で、世が世なら2枚組だっただろう。中間に30秒のインターバルが入っているが、これはロバート・ワイアット自身の意向で、「35分くらいしか緊張感が続かないんだ」みたいなインタビュー記事も目にした。「その間にお茶でもいれてもらって」みたいな発言もあったが、実際コーヒーを入れてブレイクしました。

『シュリープ』以降突き抜けて明るくなった音はここでも健在で、唯一無二かつ綺麗でしかも聴きやすい。ジャズのテイストも濃いが、大きいのはキーボード類の音色だと思う。以前の作品での音選びは比較的閉じた感じの音だったが、近作のそれは温かみのあるものになっているところが大きいのではないだろうか。

当時のインタビューを読むと相変わらずアメリカに対する怒りは爆発していて、『Foreign Accents』に出てくる「ヒロシマナガサキ・・」みたいな歌詞はイラク攻撃に対するアメリカの偽善を告発するような意図もあるようだ。でも佇まいはあくまで静かで、囁くように聴こえてくるのがいい。声高に叫ぶ時代じゃないんだよな。

このアルバムも前作から6年ぶりだが、イギリスの片田舎から届く手紙のようで本当にいい作品だ。ボリュームも凄いがやはり音が開けているのがいい。還暦前に絶好調になっていくのは最近の流行りか。リリースから7年後ではありますが、この作品に追いつけて本当に良かったです。