小坂忠『HORO2010』

f:id:tyunne:20181014182454j:plain

『ありがとう』を聴いて以来、アナログの『ほうろう』を引っ張り出して聴いていたが、何せ音が悪くなっているのと、最近の様々な雑誌記事を読むにつけ、これは買わねば!と我慢できずに手に取ってしまった。世にも珍しい「歌い直し版」。これはもう新作に近い、という印象を持った。

『機関車』の渋さといったら・・。事前に記事で目にしていた『ほうろう』での林立夫のカウントで即死かと思っていたが、『機関車』の「泣き」にやられた。ミックスを担当した飯尾芳史はビートルズのリマスターに見た「ムード」を気にしたとのことだが、確かに全体的に音圧も耳障りではなく、「今」のボーカルと演奏が溶け合っている。『機関車』での息を吸う音は元々入っていたのかもしれないが、アナログでは分からなかった。まるでperfumeの『Baby Cruising Love』のようだ。

オリジナルの『ほうろう』の方は確かにボーカルが青いかもしれないが、それはそれでやっぱり好きだ。勢いがあって。でも今回の作品はビートルズの『Love』みたいなマッシュアップでのリメイクのような、新鮮なんだけどちょっと・・、みたいな感じでもなく、完全に新作として味わえるし、ある種別物だ。35年の開きがあるそうだが、75年の音がスパイラルで一回りして高みに来るというのは昨今のYMOにもいえる現象だ。単なる復活ではないんだな。それなりに歳をとって経験が滲み出てしまう。そこがいいんですよね。