スライ&ザ・ファミリー・ストーン『Small Talk』

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最後!74年作の7作目。ジャケットにあるように子供の泣き声から始まる穏やかな印象のアルバムで、後期ジョン・レノンや復帰後のローラ・ニーロのように安心して聴ける。

全編これでは少し退屈かな、と思ったら中盤から後半にかけて盛り返してきた。『Loose Booty』や『Holdin' On』もいいが、『Better Thee Than Me』以降の3曲も見逃せない。やっぱりバイオリンの加入は大きくて、楽曲に幅が出たように聴こえる。余り売れなかったようだが、聴き様によってはロイ・エアーズみたいなレア・グルーヴものみたいに聴こえる品の良さを漂わせている。「これがスライか?」みたいな論調だったのかどうか知らないが、このまま続けていればそれなりにいい作品が出て行っただろうに。この後75年初頭には一度スライ&ザ・ファミリー・ストーンとしては解散してしまう。ということでBOXもここまで。いやあ、駆け抜けてますね。凄い人生だと思います。

当時の狂騒や、スライに皆が何を期待していたかは知る由もないが、やはりドラッグにはまってコンサートをすっぽかしたりしていた奇行の数々がメンバーからも疎まれただろうし、実際パラノイア気味の人格に合わせていくのは周囲が大変だったのだろう。まだ生きているのに半ば伝説的に扱われることの多いスライ・ストーンだが、時代にやられた犠牲者なんだと思うし、残した作品群はそうはいっても当時の先鋭、かつ多大な影響力を持つその振り幅に魅力を感じるのは分かる。何度も言うが一筋縄では語れない複雑な側面を多く持つアーティストだ。

ボーナストラックのラスト曲『Positive』が妙にファンキーでまた哀しい。