スコラ 坂本龍一 音楽の学校 ドラムズ&ベース編第4回

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一応今回が最終回。敬意を表して番組内でも触れていた『テクノデリック』を聴きながら書きましょう。

また『体操』を演奏したい、という3人のコメントは興味深い。最近はリズムが走るのが楽しくて仕方ないそうだが、ここへ来てフィジカルなものに興奮を覚えるというのは恐らく本人たちも指摘していた「老化」と無関係ではあるまい。

自分も40を過ぎて体のあちこちに歪みが出てきているが、この身体性の変化が仕事や行動、思考力等に影響を及ぼしてきているのは間違いない。ここで考えるのは「客観性」だ。

よくおじさんが運動会等の徒競走や草野球で転ぶのを目にするが、あれは気が走って体が追いつかない典型だ。そこを御三方は楽しんでいるんだと思う。恐らくは技術力でカバーできるし、一度コンピューターで相対化したからこそ頭で分解して理解した後で、そこでは語れない即興性、身体性を形にしていく楽しみを味わっているんだと思う。これは良く分かる。意外性、偶然性を楽しむのは年齢を重ねてきた人の特権で、自分の体に内在する要素を発見していく過程なんだな。精神と肉体のズレを楽しむなんて、何と高級な娯楽なんだろう。

アフォーダンスという言葉があるが、人ごみの中でぶつからないようによけていく技術は無意識の内に身に付くもの。でも自分は一度田舎で暮らしていたので、都心に復帰した際にその能力が失われたことがあった。その間、アフォーダンスの概念を少しかじっていたので、「ああ、こういうことか」と頭で理解して、その後体が慣れてまた人をよけられるようになったことを楽しんでいた。例えて言うならそんな感覚だ。

加えてリズムは恍惚感に直結していて、ノリが体を動かす。これを音楽を媒体に体の外へ表出していく楽しさ。この辺に興味が湧いてきているんだと思う。

ということで、全体を通して非常に発見の多い番組だった。今年のWORLD HAPPINESSも楽しみになってきた。『体操』やってくれるかな。