トッド・ラングレン『For Lack of Honest Work』disc 3

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最後、90年代以降の音源。

まず驚いたのはマーヴィン・ゲイのメドレーをアコギで演奏している92年のもの。名曲『Cliche』に続いて演奏されるが、これは味わい深い。トッドのライブは88年の来日公演が初体験だが、一人でやって来てアコギとピアノで演奏したのが今でも鮮明に記憶に残っている。『There Goes My Inspiration』とか良かったなあ。

03年の演奏はそれに若干近いが、こちらは音が張り過ぎていて今ひとつだ。アコギの音がアコギに聴こえない。『Lysistrata』とかいい曲をやってるんだが・・。ここではMy Space にもアップされていた『Tiny Demons』が聴ける。これは音量も丁度いい。やっぱりいいなあ。トッドは一人の方がいいんじゃないかな、ライブは。

『The Want Of A Nail』は90年の来日公演からの音源。これは確か観に行ったんじゃないかな。生音回帰のアルバムで若干大袈裟だが、曲は良かったアルバムが『Nearly Human』。確か手の指が6本のジャケットで回収騒ぎもあったような・・。コンサートは「御大」みたいな感じで、演奏しないで歌だけの師匠はまるで演歌歌手のようだった。結構間近で見たような気がする。座って観てたら師匠に睨まれたもんなあ。

最後は暗黒期の『No World Order』からの音源も入っていて萎えてしまうが、ラストの『One World』で救われる。『No World Order』の曲は今聴くと『Initiation』の頃みたいなプログレ風味も感じられる。ラップが異質なだけで、曲自体は70年代中盤の感触があるな。両者に共通しているのはコンセプト先行型であること。曲がついてこないと本質が出ちゃうんだな、きっと。

よくよく考えてみると定番の『Just One Victory』がなかったりもするが、まあこれは他でも聴けるのでよしとしましょう。それにしても大量の43曲。個々の収録時間も70分近くて物凄いボリュームだが、今何故これを出すんだろう。一時期、大量に見つかったライブ音源をアーカイヴ・シリーズとして音質の悪いものも含めて続々商品化されたことがあったが、その頃のものがコンサート単位のものだったのに対して今回は編集盤だ。トッドの場合リリース意図が不明のものも多いので、今回もよく分からない部分も多いが、それでも大量に音源が聴けて幸せ。だから素直に喜ぶとしましょう。