アイズレー・ブラザーズ『シルクの似合う夜』

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83年リリースのT-Neck最終作。これで長かったアイズレーとの旅もおしまい。

実は買い直しになるが、以前レビューした時は必ずしも好きではない、といったようなことを書いたと思う。ただ、途中のアルバム群を聴いてきた耳には別の聴こえ方がしてきた。これには驚いた。

全編メロウ路線だが、背景にマーヴィン・ゲイの『セクシャル・ヒーリング』があったというのは知らなかった。確かに『ミッドナイト・ラブ』はいいアルバムだし、予算の関係でチープなリズムボックスを使わざるを得なかったことが逆にシーンにフォロワーを生んだという皮肉がここでも存分に展開されている。『I Need Your Body』や『今夜はメイク・ラヴ』なんかそのまんまじゃないか。それを抜きにしても、必殺路線の曲群は今の耳にはとても新鮮に聴こえる。

前回は『明日への銃撃』から本作までひとっ飛びだったのでその落差についていけなかったが、80年代の諸作を経た今ではこの洗練度が逆にスウィートに響く。「アイズレーと言えば『Between The Sheets』なんですよ」と言っていた後輩がいたが、なるほど分かるなあ。当時もプラチナ級のヒットとなり、その後も数多のカバーやサンプリングに使われた事実を考えてもやはり金字塔なんだな。更にこれが3+3体制の最後のアルバムともなる。その後、上と下の世代で分裂し、長兄は亡くなってしまうという悲劇が待ち受けているという・・。

今回の再発でほぼ15年くらいを駆け抜けてきたことになるが、まさに色々な側面を発見できた旅だった。そんな中で自分はやっぱりメロウ系が好きなんだと再確認したし、80年代以降の諸作にもいい作品が多いことに気付かされた。耳の慣れや時代の流れの体感も原因だろうが、こうした一挙聴きは小西康陽も言うように今の再発ラッシュに合った必然の聴き方なんだろう。なかなかこうした機会でもないと時代順に聴いたりしないもんね。いやあ、メロウな年末を迎えることが出来ました。

ユニオンのセールで鬼のように買い込んでしまったので、休み中は更に音楽生活が続く。「ああ、金が欲しい・・」「金さえあればの40代」とライダーズ風に歌いたくもなる