大滝詠一『デビュー』

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78年リリースのベスト盤。レコード会社の意向でファン投票により選ばれた楽曲をミックス違いや新録で新たに蘇らせた作品。今回のボックスの目玉と言われている。

収録時間が31分という短さ。少し驚いたが例によって内容が濃いのでいいか。前半はMONOミックスになったりしていて09年のビートルズリマスターのようだ。『恋はメレンゲ』なんかはアレンジも異なるのでまったく違う音が聴こえてくる。エコーも緻密だ。’78と付いた曲がおよそ半分を占め、別バージョンとして聴くことが出来る。やはりエコーが目立つのと、リズムが複雑。『ウララカ’78』なんかはまったく別物だ。宇宙ものみたいになっている。

B面3曲はライブだ。『Talks About Niagara』にも書かれているが、およそライブとは思えない録音で他の楽曲と並べても違和感がまったくない。「いいぞ多羅尾判内!」という掛け声が入る。エンジニアはここで初めてライブと気付いたそうだ。

ライブ音源の後、ほとんど質感が変わらずに続く『水彩画の町’78』は白眉だ。楽曲としての佇まいが上品でコンパクトながら感動的に仕上がっている。後半3曲は全部そうだがエコーも含めてとてもバランスがいい。ラストははっぴいえんどの再録で『外はいい天気だよ’78』。それにしてもここまで美しくなるものなのか、ポップスというものは。