砂原良徳『liminal』

f:id:tyunne:20181021124625j:plain

10年ぶりのオリジナル・アルバム。傑作!こんなにカッコいい人がまだいるんだ。

前作『Lovebeat』を超える作品は難しいとも言われていたが、非常にストイックにかつ鋭い音での復活だ。間に映画のサントラを挟んでいるのであまり久しぶりという感じもしないが、先行リリースされたミニアルバムで披露された強力な質感を維持しつつ、極めてインダストリアルかつポップな音楽が届けられた。これは嬉しい。

 

『Lovebeat』にあったまったり感はなく、音の粒はとてもエッジが立ってきている。コーネリアスのリマスターでも感じた抑制感は漂わせつつ、最近のインタビューで「音が多くなってきている」という微妙な時代の空気を反映させたと思しき変化。リズムにも肉感的な色合いが加わっている。震災前なのでそれを時代とは言い切れない感もあるが、大きな流れで見ていけば確実に閉塞感からの脱却を予感させていたことになる。きっとそれは開き直りにも似た一種の原点回帰、あるいは立ち位置の確認とそこに基づく自信の現れだろう。「言葉が全然浮かばない、必要ない」といった種の発言からも自分の音楽に必要な要素が絞られてきていることが窺える。

『Physical Music』が白眉。