大滝詠一『ナイアガラ・カレンダー’81』

f:id:tyunne:20181021124850j:plain

長かったナイアガラとの旅もこれが最後。81年リミックス盤だ。こちらは買い直しとなる。音はスッキリ。音圧は控えめ。81年はロンバケが出た年でもあるので、もう大滝詠一自身は次のモードに入っているが、この作品からは先に書いたように延長線上にある。それにしても『レッツ・オンド・アゲン』が強烈だったので、『Baseball-Crazy』なんかを聴いていると「エッホ、エッホ」という掛け声が聴こえてきそうだ。恐ろしいアルバムだったなあ。呪文のようだ。

何とオリジナル盤とはLRが逆らしい。元々81年盤の方のLRにしたかったそうで、レコードが届いて「失敗した」と思ったそうだが、ちょっとそこまで聴き込んでないのでまだ分からない。いずれにしろオリジナルは鬱屈としていて、こちらは比較的ポップに出来上がっているとのこと。聴き比べも楽しみだ。あえて81年盤をボックスにいれたということは、いかにこちらのミックスが当初想定のものに近い、というよりオリジナルで後悔したか、ということが分かろうというもの。抜けの良さは感じるので、確かにポップさが増しているようには感じる。80年代に入ったんだな。ああ懐かしい。

ナイアガラを総括すると、まさに70年代の大滝詠一周辺の青春時代を共有しているような楽しくも怪しげな雰囲気を堪能できる希有なレーベルという感じがする。周辺から出てきた人達はいまだに現役で、かつ70年代後半から80年代にかけて音楽界をリードしていった才能が満載。まるで学校のようだ。コーネリアスが中目黒から世界を見ているのに比べると、大滝詠一の方は福生から日本を見ていた訳だな。これはスケールの問題ではない。影響力、あるいは集団性ということを鑑みると、よりバンカラ風というか、端的に仲が良さそう。ひとつにはラジオ番組が同時進行だったというのもある。周辺に集まるのはミュージシャンだけではなくリスナーもいた訳で、互いに影響し合いながら時代をつくっていった。それもアングラで。そしてそれは長持ちする。本人が執拗に時代に合わせて音をリファインしていくからかもしれないが、なくならないのが凄い。でもって音はやっぱりインパクトがあるし、コンセプトも強烈。この諧謔精神とポップスの歴史を凝縮したような、まるで授業を受けているような雰囲気の音楽。そして聴いていて楽しい、という基本的なことを押さえている。

つらつらと書き連ねたが、とりあえず買って良かった一生モノ。さて復習もしなくちゃね。いつやろうかなあ。宿題みたいだ。