テイ・トウワ『SUNNY』

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豪華ゲスト参加の新作には憂いがない。

晴れた日にしか作らなかったので『SUNNY』だそうだが、内容はアッパーだ。『FLASH』『BIG FUN』に続く3部作というのは後付けで定義したもののようで、音の連続性はあるがコンセプトの連続性はジャケットを除くとあまりないように思う。クオリティは高くてカッコいいんだが、今この音でいいのか?という疑問は残る。上げ過ぎなんだよなあ。前作はこれまでの最高傑作だと感じたが、ここへ来て少し後退したのでは?そこには憂いや陰りというものがないんだ。そこがコンセプトといわれればそれまでだがそれでいいのか?

制作は3.11以前で、丁度その日に完成した模様。震災以後だったら出していなかったそうだ。それはそうだな。音が攻め過ぎてるもの。この無条件の明るさを今求めるかといったらきっと違って、何となく下を向いてしまう今の雰囲気には届かない音という気がどうしてもしてしまう。テイ・トウワには一時期バブリーな雰囲気があったので、その勢いが持続してしまった感がある。いや、カッコいいんですけどね。

砂原良徳コーネリアスをリマスターした際に「最近はまた音が多くなってきている」と発言していたが、先の砂原の新作でもそれは感じられてゼロ年代以降のテイ・トウワ曰く「less」の感覚がまた塗り変わってきた感覚があった。その流れが色濃いエッジの立ち方、ここは前作同様だが、そこに影があってもいいように思う。これは震災以後という意味ではなくて。あるいは言葉がいらない感覚、その辺りはアルバムタイトルが何でも良かった、という話に繋がるが、その辺りは直近の雰囲気を伝えているように思う。ただこの音楽はちょっと違う。

少し変わってくるのは『PARK』から。メランコリーとメロウが関係あるのかどうか知らないが、少なくともここにヒントがある。メロウが持つ奥行きにこれからの希望が隠れているんだ。この曲には小池光子や高田蓮が参加しているのでその辺もポイントかもしれない。で、最後がO.S.Tなる小山田圭吾砂原良徳との共作。ここはさすがで、ここでのアコギにすべてが救われるように思う。