YMO『テクノドン』

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ここ最近ずっと金欠でCDがまったく買えなかったが、やっと1枚だけ。WORLD HAPPINESSの予習も兼ねて(といってもこのアルバムからは演奏しないと思うが・・)『テクノドン』のリマスター再発を手に取った。

装丁があまりにも貧弱で、「もしや初回盤を買い逃したか?」と思ってしまった程。どうも99年の再発盤そのままの装丁・ライナーのようで、この辺には愛を感じない。このタイトルは内容で買うべきなんだ、と自分を納得させて渋々レジへ向かった。

『テクノドン』については賛否両論あるが、自分は結構好きなアルバムだ。再生自体が周囲の祭り上げで、本人達もいい思い出がなさそうなので、無視され続ける作品ではあるが、先日のベスト盤には目出たく『NANGA DEF?』が収録された。内容的にもポップだし、他の作品にも決してひけをとらないと思うんだが、やはり記憶と結びついてしまうんだろう。『Let It Be』みたいなもんか?

肝心の音の方は、一聴してすぐ分かる程の変化はない。基本、オリジナルに忠実だし、こちらもビートルズ以降の流れを汲んで、音圧も抑えめ。しかし、隙間に発見がある。音数が少なくて地味目に聴こえていた曲、具体的には『Dolphincity』や『Nostalgia』等が新鮮に響いた。要するにバックのノイズが主張しているということで、一見平面的だった曲に奥行きを与えている。『Dolphincity』での様々なノイズ群、細かいビートの一拍一拍に輪郭が出ているし、『Nostalgia』の方も思っても見なかった迫力を手にしている。バックの音が押してくるんだな。

後半の『O.K.』『Chance』『Pocketful of Rainbow』の流れは当初から圧巻だったが、『O.K.』でのハイライトである左右への音のセパレーションは分離の仕方が鋭角的になって、より狭く包み込むようなイメージになったように思う。これはこれでありだろう。『Pocketful of Rainbow』は逆に隙間が魅力的な曲だったが、こちらも印象はかなり賑やかになっている。聴こえなかったコーラス部分を発見したりして楽しい。シングルのみ収録だった英語バージョンは、こんなにアレンジ違ってたっけ?と思う程懐かしい。

93年当時は「もうこれが最後だろう」と思って東京ドームのライブにも足を運んだが、まさか毎年夏フェスで見れるようになるとは思いもよらなかった。『テクノドン』自体も当初生演奏でいく案も出ていたそうだが、今のYMOはそれを地で行っている訳で、やっと本人達の希望が叶ったともいえる。一貫しているのはやはりグルーヴで、演奏手法が変わっても目指すところは変わらない。そこを今年も味わいたいなあと思う。

ということで、この再発盤、掘り甲斐がありますよ。