PIZZICATO ONE『11のとても悲しい歌』

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お盆休みもあと2日。外も涼しくなってきて非常によろしいが、今日みたいに雨模様だと少し寂しくもなってくる。そこで、という訳でもないがやっと聴けた小西康陽の再始動盤。確かにこれは悲しい。

売場で大分探したが、何と「日本のジャズ」のコーナーに置いてあった。ジャズじゃあないだろう、と思って聴いてみたら確かにこいつはジャズだ。元々ピチカート・ファイヴにはあった要素ではあるが、このアルバムにはそうした意匠が丸出しだ。でもこの落ち着きはなんだろう。良質な部分だけを抜き出して狂騒を除いた音楽。そこに浮ついたものなどなく、純粋な、非常に純粋なポップスが置かれている。それでもって単純にカッコいい。そこが気障ではないのがいい。

基本的にカバー集で、曲毎にゲストを替えて歌われるパターンだが、音に静かな一貫性があるので安心して1枚のアルバムとして聴ける。リリースされたのは震災後だが、制作はその前。その割には現在を予言するような静けさ。ここまで必死に足掻いてきたものが飽和点を迎えたような、未来が見通せずにそれでも生活を続けていかねばならない終わらない現実に句読点を打つような、そんな気分は震災前からも漂っていたんだな。そうでなければこのアルバムや細野晴臣の『HoSoNoVa』は生まれないだろう。

とても爽やかなエネルギーをもらったような気がするアルバムだ。