奥田民生『Better Songs of The Years』

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2枚組が続く。

08年に出たこのB面集はずっと気になっていた。最近通勤中に奥田民生をよく聴くので、今回ついでにと思い久々に寄ったユニオンで見てみると何と3セットも在庫が待ってくれていた、さすがに3500円は高いが1200円なら・・ということで購入。XTCでいうと『Rag & Bone Buffet』のようなこの作品、目玉は『ワインのばか』と『オーナーは最高』に尽きると思う。

 

CDシングルのカップリング曲に光る曲があるのはXTCですっかりお馴染みなので、奥田民生の場合もシングルはまめにチェックするようにしていた。でもこの2曲は抜群。オーラが出ていた。『ワインのばか』は所ジョージもTVで奥田民生がゲストの時にギターを弾きながら歌っていた。これいい曲ですよね、ほんと。

当然初めて聴く曲もあったが『独裁者』『ドライバー』『KYRISUIYOKUMASTER』『オリエンタル・ダイヤモンド』なんかはアルバムに収録されていないのが勿体ないくらいのクオリティだ。ここ最近の作品は派手ではないが決して外さない佳作揃いなので、その中に入っていても決しておかしくない曲が並んでいるように思う。『夕陽ケ丘のサンセット』もいい曲だなあ。

北野武Twitterで「生きる意味なんてモノはないとつくづく思う」みたいな発言があったが、奥田民生の歌を聴いている時もよくそう思う。深読みをさらりとかわす無意味さ。意味なんてなくて感性でやっていることがたまたま受けてここまでやってきた。でも手は抜かない。というより『人の息子』風に言うと「手を抜け、気を抜くな」ということかな。以前雑誌の取材で答えた記憶があるが奥田民生東浩紀は我々の世代のヒーローだと思う。非常に共感できる気楽さと真剣さを持っているんだな。

この後奥田民生はひとり多重録音に走っていく訳だが、それもわかるような気がしてきた。宅録曲の『オリエンタル・ダイヤモンド』のクオリティは自分ですべてをコントロールする気楽さとひとりで盛り上がる疾走感、ドラムを自分で叩くことによって恐らくそんなことが頭の中を巡ったんじゃないだろうか。その後の作品の軽やかな充実度を考えるにつけ、そんなことを考えた。