ルーマー『Seasons of My Soul』

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ここらで箸休め。ボックス購入価格を下げるために一緒に入手した震災直前にリリースされたルーマーのデビュー・アルバム。『スロウ』をFMで聴いて一瞬カーペンターズかと思ったが、新人のアーティストと知ってとても驚いた。

スッと耳に入ってくる柔らかさ、ポップスの歴史と伝統に裏打ちされた穏やかかつ綺麗な佇まい。とても新人とは思えないが何でも30歳を越えているそうで、かつ家庭の事情が色々あった人のようだ。それでいてどこまでも穏やかな物腰。確かに親父殺しの必殺メロディーでバカラックが反応したのも宜なるかな。こういう時期にこうした音楽は本当に助かる。

 

柏に通り魔が出て子供を持つ身としては日々心配で気を揉んでいるが、世間の様々な荒波を乗り越えて到達した高みにこうした穏やかな世界が広がっていたというのは感動的な事実だ。カーペンターズキャロル・キングといった先達の歌声とオーバーラップするが、ここに刺激や鮮度を求めるかというと違うように思う。

穏やかに暮らすということはどういうことか。日々多忙だったり、逆に何もない日々が続いたり、といった焦燥感は自分に余裕がないと生まれてくる。そこで起こる感情的な振る舞いや気持ちは周囲に悪影響を与えるだけでなく自らのベクトルも曲がってきてしまって、それだけで追い込まれてしまう。何事も熟成が必要なんだな。達観とまた違う自然さは老化と共に訪れていて、単に体が動かなかったり記憶力が衰えていたりすることでいい加減にいい感じになってくる。いい老い方を細野晴臣が折に触れて語っているが、大切なのはやり過ごすことで周りのすべてを変えていくなんてことは最初から諦めていく。そんな風にあと20年、30年暮らしていけるだろうか。

等と考えながら聴いている。本当に今年は嫌な一年だ。