矢野顕子『オーエス オーエス』

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84年リリースの9作目。矢野顕子の復習は昨年末から断続的に続いているが、最近初期作品のリマスター等も出て中古市場も潤ってきた。もう少し手を伸ばしたいところだがyanokamiもあるし上原ひろみとの共作も出ているので金銭的に一筋縄ではいかなそうだ・・。

散開後のYMOを集めて東京録音。リトル・フィートのメンバーと再会してLA録音、といった構成で端正な音づくりが行われている。『ラーメン食べたい』が一番有名だが、細野関連の『Hi, Hi, Hi』や『終りの季節』もいい。音色的には若干の古さも感じるが、そこはトータルでは左程気にならない。

2つ疑問がある。ひとつはMIDIのことだ。きちんとした再発が行われない理由はやはり権利関係だろうか。坂本龍一の同時期の作品もそうだが相変わらずプラケースできちっとしたリマスターもできてないようだ。やはり所属のレコード会社が小さいとこうなってしまうのか。とても残念に思う。

もうひとつは自分のこと。何故当時矢野顕子に手が伸びなかったんだろうと考える。恐らくそれは母性に原因がある。母としての立ち位置や優しさが当時の若造にはカッコよく映らなかったんだな。YMOのサポートに入っていた時のエキセントリックな違和感とその後の母一直線な方向に不気味さを感じていたんだろうと思う。今になって矢野顕子や90年代の高橋幸宏に手が伸びているのは端的に自分も歳をとったということか。落ち着く音を求める年齢になったんですね。やっと耳が肥えたという感じか。

とはいえ『峠の我が家』の鋭く切れ込むような音がこの後にリリースされている訳で、本作はそこに至るまたもや過渡期と捉えることも出来る。多いな、過渡期が。