YMO『TECHONODON LIVE』

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約10年後の93年、YMOは突如再生する。散開コンサートを観に行けなかった私は「これが最後」とばかりに当時の赴任地の福島から出てきて東京ドームに観に行った。その広さと圧倒的な映像劇に感動した上で、坂本龍一の妙な祭り上げ感に違和感を抱いて帰ってきた記憶がある。細野晴臣が地味に扱われ過ぎている気がして我慢がならなかった。

ここでの再生も本人達は決して納得づくで行ったものでもなく、解説の細野のコメントにあるように当時の活動は「点」として存在している。過去でも未来でもなく現在。ただその価値観が今も継続しているという話は非常に示唆的だが。

で、久々に観てみるとこいつはクールだ。どうも繰り返したまに観ていたのはTV放送の録画のようで、LDで観ていたこちらの映像はあまり観ていなかったようだ。映像処理が曲毎に異なっていて観ていて非常にクールだ。やはり演奏を主体に構成する映像美は見事だ。その後U2なんかでも駆使される巨大空間を使った映像ショーはここで雛形が作られたはずだ。

中間部の『キャスタリア』『ビハインド・ザ・マスク』『中国女』での3人の楽しそうな様子は本人達も過去の曲のリアレンジを嬉々として捉えている様子が伝わってきて微笑ましい。それにしてもこの時期の坂本龍一は本人曰くの「馬並みに元気」な状態で結果的にこのコンサートを牽引している原動力になったんだろうと思わせる。それはそれでいいんだよな、やっぱり。と気持ちを新たにしたのです。

特典映像の記者会見では3人の雄弁さに少し驚かされる。レノン・ヨーコよろしくベッドインで登場してとにかくよく話す。ここでも「点」の話が出たが、記者が「先程テクノに終止符を打つとおっしゃいましたが・・」と質問すると「終止符とは言ってない。ピリオド、点ですね」とすかさず返す細野晴臣の反射神経は見事だ。その14年後、三たび集結して今度は毎年夏フェスに出るという活動に入るとは当時思いもよらなかったし、毎年「今年が最後」という気持ちでWORLD HAPPINESSに参加している。(因に今年も先行予約抽選に申し込んでしまいました。)終わらない、というより続いているんだな。毎日、毎時、毎秒がひとつの点であり、それが粛々と連続している。過去も未来も実在しない、と言った哲学者がいたようだが、まさに我々は点の集積をただ体験しているだけなのかもしれないね。