昨年リリースされた元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎のソロ1st。しばらくずっと気になってましたがやっと手にしました。こいつは何に近いんだろうと思って考えていましたが、トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』の感触に似ていますね。
バンドを解散してしばらくフラフラしていて思い立ったのはコンガだった、とのことですが、確かに全編に渡って鳴り響いています。ゆらゆら帝国のラスト作『空洞です』は特異な傑作でしたが、少し怖さも秘められていてなかなか繰り返し聴けない凄みがありました。でもこちらの方はもっとスッと耳に入ってきて、かつとても文学的な気がします。salyu × salyuでの歌詞提供が解散後初の活動でしたが、そこで提示されていた世界観がそのままこの作品でも提示されていて、ある意味奥田民生にも似たナンセンスさと突き抜けたポップさが満ち足りていてとても聴きやすく仕上がっています。これ、名作ですよ。
染みてくるビート感は何も考えてない、何も提案しない、何も煽らない、という自然体で聴く側の深読みを一切否定する強さを持っている気がします。時代を反映していると語ってしまえばそれまでですが、何にもない、どこにもない、といったギャートルズみたいな一種コミカルでもある音楽の秘める恐ろしさは強烈な達観とビジュアルも含めた神々しさを感じます。坂本慎太郎は立ち姿がすらっとしてかっこいいんですよね。
徹底したクールさ。誰にでも共感できる、どこでもない感覚。コーネリアスが反応するのもよく分かる、「今」を反映した所在のなさが最大にして唯一の魅力だと思います。
