ザ・スミス『The Smiths』

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昨年スミスのコンプリート・ボックスがジョニー・マー監修の元発売されましたが、今回やっと手にしました。ずっと気になってたんですよ。スミスは『Meat Is Murder』しか持ってませんでしたが、こちらも全英トップ20ではよく耳にしていたのでシングル曲は自然と耳に入ってきました。これも不思議なグループでしたが、ギターサウンドのシンプルな響きに惹かれて、かつモリッシーの自己愛と不況下のイギリスの世相を反映したポップでありながら歌詞が異常に暗いという妙なカウンターカルチャーとして特異な存在でした。

最初は84年リリースの1stですが、何とも牧歌的でこのシンプルさが魅力なんですよね。当時も「何で売れてるんだろう」と外国人の私は意味が分かりませんでしたが、ザッパをギターマスターとして愛するようにスミスもジョニー・マーのギターを聴きたかったのかもしれません。モリッシーのボーカルは好みが分かれるところですが、意外と男っぽくて嫌いじゃないです。信奉者が多いのはやっぱり歌詞が原因なんですかね。

音の質感は初期キュアーにも似た当時のブリティッシュ特有のインディーズ感が出ていて微笑ましいですが、何といってもノスタルジーを感じる。当時も急に出てきたような感覚がありましたが、この突然感がスミスの存在感を象徴していると思います。ニュー・オーダーにもありましたが、「何これ?」という登場の仕方が80年代の英国アーティストには多かった気がします。売れ線とは別にこうしたオルタナティブな流れが一貫してあって、当時の全英チャートは面白かったんですよね。その内全米と同じようなチャートアクションになって急速につまらなくなりましたが、80年代の前半から中盤までは確実に個性的な流れがあった。何故なのかは分析できませんが・・。