矢野顕子『ごはんができたよ』

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80年リリースのこのアルバムもずっと聴かずに過ごしてきました。今更気付きましたが2枚組だったんですね。74分というボリュームで迫ってくる音はとても勢いがあります。これを全盛期と呼ばずしてどう表現すればいいのか。音は薄めではありますが緩急つけた展開と必殺の名曲『ひとつだけ』から始まってしまうという今となっては驚きの曲順。エンディングから始まるようです。

『ぼんぼんぼん』なんかもよくて、かつ『在広東少年』でYMOツアーを思い出すという青春爆発の流れ。カッコいいですよ、今聴いても。バックはYMO大村憲司というこちらも鉄板の陣営で当時の音をブンブン振り回してグイグイ攻めてきます。かと思えば弾き語りみたいな静かな曲も結構な割合で収録されていて後の展開を予想させる。でもここでまずはひとつの沸点に達したことは名だたる名曲群が語っています。

その頃中学生だった自分は矢野顕子の母性、というよりポップス然としたボーカルものに違和感を抱いていてまず手が伸びなかった。『ひとつだけ』みたいないい曲には気恥ずかしさを感じていたし、童謡とかも嫌でした。なので何となく矢野顕子は敬遠気味だったんですね。オノヨーコに対する感情とでもいうか(全然違いますが)単純に入ってこなかった。でも発売後30年以上経って聴くとその勢いに圧倒されてしまいます。『TONG POO』にボーカルつけてやっちゃうなんて・・。

以前も書きましたが『ひとつだけ』は現在の我が家の設計コンセプトでもあります。家族とかそういうものに思いを馳せるには中学生には早過ぎた。それでもこれだけ長持ちする曲をさらりとテクノポップ全盛期のしかもオープニングに配して世に提示していたという事実に敬服します。曲間なくどんどん行く展開もスピード感があっていいですね。まるで当時のコンサートを観ているような感覚になります。