The Beatles In Mono『Help !』

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ここから2枚はモノラルとステレオの双方が収録されているディスクになります。発売当時のステレオミックスは未CD化だったんですね。モノラルの方は『Ticket To Ride』以降の曲に少しずつ押して来るものがあります。この時期になってくると音の数や種類も多くなってきますし、それらが渾然一体となってひとつに納められている分、奥行きも出て来るんですね。音の小ささは相変わらずですが、後半は結構気にならなくなってきました。

で、びっくりしちゃうのはやっぱりステレオミックスです。改めて聴くとやはり片側からしかドラムが聴こえなかったりボーカルが右側のみだったり、というのはモノラルを最初に聴いた人からすると相当奇異に聴こえたはずです。広がり、スケール感という意味では当たり前のようですがステレオの方が大きいんですが、これはきっと慣れないと驚くんではないかと改めて思いました。自分のように最初がステレオ盤だと左程驚かずに、「昔の音だからこんなもんでしょ」といった認識もできるんですが実はそうではなかった。こちらのが後な訳ですから。非常に原始的な左右への配分とエコーによるボリューム感の増幅で結果的には音も多少大きくなって迫ってきますが、それは覚醒剤による拡大のようなものでやはり後行程だったんだなと実感しました。

どっちがいいかと考えると実は微妙だったりもします。モノラルはそうはいってもコンパクトなんですね、迫力というよりも。ボーカルの定位が中央にある曲なんかはステレオでも左程不自然には聴こえなかったりもしますし、何より今の耳にはダイナミックさがないと入ってこない。『You've Got To Hide Your Love Away』みたいな曲はボーカルが右に寄ってしまって明らかにステレオでの不自然さを感じますが、大抵の曲は楽器の振り分けなのでそんなに変ではない。ここはやはりどちらを最初に聴いたかの差ではないでしょうか。

何となく肝はベースのような気もしてきました。中期以降ポールのベースがうねりを伴ってきますので、そこがどう定位してくるか、そこで聴こえるものが変わって来るような気がします。