The Beatles In Mono『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』

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このアルバムは実はあまり好きではなかった作品ですが、09年のリマスターでその音の力強さを見直した記憶があります。今回モノラルで聴き直してみると落ち着きが再度出てしまって、元の印象に戻りました。ジャケットはインパクトがありますが、音の方は少し古臭い印象があるんですね。思うにポール色が強くてボードヴィル調やオールディーズ風の楽曲が強い印象を残すからなんだと思いますが、当時のいい部分は次作の『マジカル・ミステリー・ツアー』に凝縮されてしまったように感じます。

ステレオ盤はかなり手早く作られたそうで、その割にはそちらの印象が強く残っている皮肉な作品ではありますが、モノラルでは極端な左右の装飾もなく、音楽としてしっかりしている。それが逆にオーソドックスな楽曲の特徴を助長して落ち着いた印象に逆戻りされているように思いました。これといった突き抜けた曲がないのが残念なところで、トータル・コンセプト・アルバムという冠に個別の曲の評価が隠されてしまった不幸な作品ではないかと思います。ビートルズと言われてこのアルバムだけを初めて聴いた人は少し興味が薄れてしまうんじゃないかなあ。

『Good Morning , Good Morning』から『Sgt. Pepper's ~』に繋がる音の自然さなんかはこちらが確かに本物なんだな、と思わせますがそこは微細なポイントに過ぎない。『A Day In The Life』のストリングスの高揚感はやっぱりそうは言っても説得力があって、モノラルでも充分恐ろしい感じがします。とはいえ時代に個別の作品が隠されてしまった作品、という印象は変わりませんでした。