The Beatles In Mono『Mono Masters』Disc 2

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さて、本当に最後になりました。色々と発見のある旅でしたが、最後にこうしたポップなシングル集を聴くととても幸せな気持ちになります。なんだかんだ言ってメンバーの結束度合も含めてビートルズの頂点は『Hey Jude』だったんじゃないかと思わせてしまうだけのパワーが音にありますね。LAでシルク・ド・ソレイユの『LOVE』を観たんですが、その中でも『Hey Jude』にはやられちゃいましたね。子供が出てくるんだもの。オープニングの幕が落ちるところも滅茶苦茶カッコよかったんですが、その後コーネリアスのコンサートでその幕の演出を再体験しました。

『Day Tripper』『Paperback Writer』『Rain』『Lady Madonna』といった左右にボーカルが振れていた曲がどんな風に聴こえるか興味がありましたが、結論からするとこちらも渾然一体となって音が強い。楽曲としての魅力もあるのは勿論のことですが、音の効果が減る分ダイレクトに普通に聴こえる。なかなか表現しづらいですが演出がない分スタジオ録音盤らしくない、といいますかライブ感が増すといいますか。端的にメロディの良さが充分に味わえるといったところでしょうか。聴き込み甲斐がある曲になったなあ、という印象です。トリッキーじゃない分トータル性が増すんですね。

『イエロー・サブマリン』収録の4曲はどれも好きですが、中でも『Hey Bulldog』、こいつはやっぱりカッコいい!ジョンの曲は『Rain』もそうですがボーカルの音を変えてかつ小さめにしていることで楽器が前に出て来て非常に躍動感がある。これが中央に定位することでオルタナティブみたいなザクッとした感触が味わえます。以前も書きましたがジョージの『It's All Too Much』は音がテクノみたいでとても未来的な曲に聴こえます。ここら辺の楽曲ではポールのベースがブンブン鳴っていて気持ちがいいですね。

ステレオかモノラルか、という議論がありますが、通して聴いてみて思うのは「ビートルズが好きならモノラルも」といった結論です。モノラルがオリジナルなのでそこを押さえておくのは確かに価値があることですが、かといってモノラルだけ聴いていたら恐らく音圧の低さに多少初期のタイトルは物足りなさを感じてしまうように思います。それでもモノラルを推すのはやはり音の定位が真っ当なので楽曲を味わうにはモノラルの方が向いているといった理由ですね。ステレオ盤の時代に引っ張られた摩訶不思議な雰囲気はそうは言っても時代のパッケージとして無価値ではないと思いますし、何よりステレオで各パーツのエッジの立った音を楽しむのも後追い世代には欠かせない領域のように思うんですよ。ただしリアルタイム世代にはそれは不要なんですね、きっと。なので世代によって聴くべきものが違う、という感覚です。

ちょっと値は張りますが、モノボックス聴いといて良かった、と思います。もう二度とここまでのお祭りはないでしょうから、誰かが言っていた通り自分が買うビートルズのCDで生きている内にはこれが最後、と思えば決して高い買い物ではない、と考えることもできる。ビートルズの音楽が好きなら頑張って買うべきかな、と思います。それなりに発見もありますし、その後長い間味わえる代物ではあるんですよね。