ポール・マッカートニー『RAM』

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ポール・マッカートニーのソロでは一番気に入っていた71年リリースの2ndがデラックス・エディションとして再発されました。さすがにスーパー・デラックス・エディションまでは手が伸びませんが、今回は2枚組の方を購入。その音のよさに普通に驚いています。

『RAM』は最初の3曲、という印象でしたが、その3曲からして音の広がりが違います。「こんな風だっけ?」という位色んな音が聴こえて、まるで今年出た新作と言われても納得してしまいそうです。最近の諸作はこんな雰囲気ですしね。『RAM』の印象はくぐもった感じにあったんですが、その辺は大分認識が変わりました。

で、中盤から後半にかけては少しうるさくて過剰な感じがあって左程聴き込めていなかったんですが、今回聴き直してみて結構凝ってるなあ、という印象を持ちました。1曲の中の構成が多岐に渡っていて、それが迫力を持って押してくる。混沌までいかないさじ加減が絶妙ですが、それにしても凝ってるなあ。詰め込み過ぎなんでしょうね。今回音もいいので、より過剰感も増しました。「お腹一杯だなあ」とするっと聴き流してしまうには余りに迫力があって、もう少し聴かなきゃ、と思わせます。

2枚目のボーナストラック集はシングルの『Another Day』からしてきちんと聴くのは初めてでしたが、こちらの方が従来の『RAM』にあった手作り感が残っているような気がします。こんな感じの手作り感覚が『RAM』の印象だったんですよ。それが今回のリマスターで本編がかなり構築された作品に化けているように思います。落ち着いて聴いていて時々「おっ」と思わせるようなアルバム。それが今回の再発で急に主張するようになりましたね。いいことだと思います。でもって2枚目で牧歌的な雰囲気を味わう。そのバランスがいいんじゃないかな。と、勝手に位置付けてしまいますが、『RAM』がこうして拡張したのは目出たい出来事のように思います。飛び交う言説にビーチ・ボーイズとの共通性を感じつつ、作品自体はシンプルに楽しむ。ロウファイなポールが味わえるいい作品だと思います。