カーネーション『LOVE SCULPTURE』(Deluxe Edition)

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カーネーションはこれで終わってもおかしくなかった。

00年リリースの10作目。こちらも既に入手困難な状況ですが、今回手に出来てよかった。とはいえ本作はカーネーションの暗黒面だと思います。前作にまだ残っていたポップな要素はほぼ消え去って、より荒々しくなっている。そして暗い。このアルバムもしばらく聴かずにいた作品ですが、今年に入って限定のアナログ盤を偶然見つけて聴き直していたところでした。アナログ盤は本編の続編のような位置づけですが、その楽曲はこの2枚組の2枚目に収録されています。そこで目を惹くのはやっぱりはっぴいえんどのカバーなんですね。

『春よ来い』『はいからはくち』『抱きしめたい』と3曲とも大滝詠一作品なのが象徴的ですが、ここで演奏される音の勢い、こいつが後の3ピースでの復活を予見していると思います。とにかくはまっている。本編にも密かに隠れているバンド志向は構築された音の隙間から滲み出て来ていて、不思議に復活後との連続性を感じさせます。この後直枝政広はソロも出してますよね。

でもリリース当時はやっぱり繰り返し聴こうとは思わなかった。それくらい終末感が漂っていたんですね。曲自体は完成度は高い。でも伝わってくるものは破綻でした。端的に言うと「カーネーションつまらなくなっちゃったな」と思ったものです。その3年後に奇跡の復活を果たすなんて、やはり当時は想像もできなかった。

それでもこのボーナスディスクを聴くとやはり終わってはいなかったんだな、と思えます。この剥き出しの荒々しさにまだまだパワーは秘められていた。デラックスエディションで映し出されるのは2枚目から見た本編の鏡像で、この前とこの後が立体的に、というより四次元的に見えてきます。時間の流れの結節点。バンド自体はきつかったでしょうが、これは歴史の中の重要な「点」なんですね。それをはっぴいえんどから感じるというのも粋じゃあないですか。