小坂忠『Chew Kosaka Sings』

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小坂忠のボックスに戻ります。

本作は76年リリースの作品ですが、『ほうろう』の次に出されたとは思えない奥行きのない作品でした。『ほうろう』後のツアーで憔悴し、かつレコード会社も移籍、プロデューサーのミッキー・カーチスとも途中で揉めて・・と精神的にもきつい時期の録音とあって、散漫な印象は否めません。

それにしても状況の違いでこんなにも成果が違ってくるんですね。『ほうろう』が強烈だったので、ここで聴けるサウンドはとても薄く聴こえます。いわゆる「普通の」音で、グッとくるものがない。この落差も含めて小坂忠というアーティストなんですね。活動を見渡すと振幅が激しい。要素としてレゲエやニュー・オーリンズなんかも入っているんですが、捻りが足りないので音楽として奥行きが感じられないんですね。逆に細野晴臣の存在感がいかに大きいかが分かってしまうという皮肉な構造になってしまっています。プロデューサーというのは大きいですね。改めてそのことを意識しました。平板になってしまっている。

単独では絶対に手にしないこうした作品も流れの中で聴くことが出来るのがボックスの醍醐味でもある。そう考えていくことにしましょう。とはいえボーカルはいいですよ。