小坂忠『Garden of Reunion』

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『People』発表後に行われた01年のコンサート映像です。18曲のボリュームで2部構成。「再会」を祝うかのような幸福感のあるステージでとても微笑ましい。そこでは2つのことを感じました。「ヒックスヴィルの存在感」と「小坂忠の哀しさ」です。

第1部は比較的初期の曲をアンプラグドで演奏するシンプルなセット。『からす』や『ありがとう』が歌われます。『氷雨月のスケッチ』や『ボン・ボヤージ波止場』もいいですね。ここで演奏するメンバーがヒックスヴィルなんですが、まずは小暮晋也が若い!髪型が先日観たワールド・ハピネスのオリジナル・ラブの時の姿(リーゼント)ではなくて、単純に髪が長い。小暮晋也というとリーゼントというイメージがあったので、最初は誰かと思いました。それと真城めぐみ。歌は相変わらずうまいんですが、何しろ巨漢なので目立って仕方がない。でも演奏は非常にうまくて、小坂忠の往年の名曲を丹念に再現していて非常にスリリングでした。小坂忠も久々のステージで最初は緊張していたようですが、歌の方はバッチリですね。初期の曲は観客からも歓声が上がります。

第2部は細野晴臣鈴木茂林立夫のティン・パンに佐藤博浜口茂外也、佐藤佳幸らを加えたベスト・メンバーによる演奏。こちらはもうゴスペル、AORの世界で安定した渋い演奏を聴かせてくれます。『機関車』から始まる構成で、アレンジも渋い。『People』にあった余裕そのままの円熟味のあるライブです。これを生で体験したらさぞかし素晴らしかったんだろうなあ、と観ていましたが、途中から何故か哀しくなってきたんですね。それが何故なのか分からなかった。

見終わって思ったのは「時間」です。そもそもこのライブは25年ぶりにポップスのフィールドに復活した際のライブであり、昔の仲間達と作り上げた作品です。その再会と『夢を聞かせて』の歌詞にあるような、かつてを懐かしむような風情。それが幸福感を通り越して哀しさ、切なさを助長しているように聴こえました。色々なことがあってここまで来た。道は決して平坦ではなかったけれど、そこを乗り越えて今は楽しく温かい雰囲気に包まれている。そんな感覚がふとよぎって哀しくなります。それは20年、30年といった時間がなせる技だと思うんです。歌声が優しいので尚更そうした感覚が感じられて何とも言えない気持ちになりました。

うまく説明できませんが、今の自分にはまだまだ到底辿り着くことの出来ない境地なんじゃないかな。そんな風に思うと、単純に諸手をあげて同化出来ない距離を感じた映像作品でした。