小坂忠『Garden of Archives』DVD

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ラスト!『ほうろう』期のライブDVDです。

30分程と短めではありますが、当時の空気を確実に伝えてくれます。バックはティン・パン・アレー。コーラスは吉田美奈子で、見た目は普通のお姉ちゃんですが、歌うと凄い。小坂忠と一緒に踊っています。みんな若いなあ。当たり前だけど。

ここでの演奏はもう体が勝手に動いて止まらないかのように見えます。演奏にグルーヴが出ているので、特に意識せずとも凄い演奏が出来てしまう。誰が全体を牽引するかというと実は主体は不在で、全体で押していく。しかも皆楽しそうです。新しいもの、刺激的なものが現れると皆で一斉にそちらへ向かっていく。これが転がり続けて止まらないんですね。勢いというのは恐ろしいものです。

『機関車』から始まりますが、ここでのアレンジもまた違って、キーボードとコーラスのみをバックに歌い上げるスタイル。『氷雨月のスケッチ』も『ほうろう』のバージョンとは異なって、よりファンキーに変化しています。こうした短期間でのアレンジの変化も見所ですが、逆にそのスピードに小坂忠自身は消耗してしまったんですね。そこは何となく理解できるような気がしました。沸点は長期間維持することはできないんですね。

ということで小坂忠のボックスもこれでおしまい。活動の振幅が激しいので一言で言い表せないですが、『ほうろう』を頂点にしながら様々な側面を見せる中で、実は到達点としての『モーニング』が大事な作品なんだな、という理解です。『People』で見せる円熟味は四半世紀を跨いで『モーニング』と地続きになっている。ピークも大事ですが、自分の落ち着きどころというのが最も大切なんだな、ということを学ばせてもらったような気がします。