トッド・ラングレン『A Wizard, A True Star』

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リミッターがかかりまくったドラムの音が鳴り出した瞬間から一気に引き込まれる素晴らしい魔境。短い曲の集積がポップな毒を振りまき、軽く陶酔の彼方へと連れて行ってくれる作品です。ノンストップのA面は本当に美しくてカッコいい。

トッド・ラングレンの作品が相次いでCD化され始めた頃、「AVガーデン」という番組でサエキけんぞうが本作収録の『Rock And Roll Pussy』をバックにトッドを紹介していました。もうその何十秒かですっかり虜になった私は翌日渋谷に走って早速何枚かの作品を手にしたのです。それ以降、この作品と次作の『Todd』にはやられっぱなしです。

とにかく振幅が激しいアーティストですが、ここでの爆発的なクリエイティビティは何事が起こったかと思わせる程のもので、音を想像しただけで鳥肌がたつ時間を何年も過ごしました。『You Don't Have to Camp Around』みたいな絶妙な小品も挟みつつ、ソウルメドレーや『Just One Victory』みたいな泣きの名曲まで並べて世に提示した先見性と実験精神。こいつはそうそう真似の出来る芸当ではないし、『Hello It's Me』からのギャップに多くのリスナーを驚かせていたんではないかと推測します。ジャケットも怪しげで最高ですね。

意外と音が軽めなので混沌としている割には聴いていて疲れないという不思議な作品でもあります。