はっぴいえんど『風街ろまん』

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傑作。浮かぶ駅の沈むホームにとても素早く飛び降りたくなる『抱きしめたい』からして最高ですが、その後ジワジワと再評価されていった『風をあつめて』や『はいからはくち』等名曲が目白押しの素晴らしいアルバムです。

自分はYMOから遡ってここに辿り着きましたが、当初はフォーク然とした音像にしばし立ち止まって困惑しました。細野晴臣の振れ幅の大きさは理解を超えていて、その後活動歴を知るにつけ「グルーヴ」の一言で一気通貫されているアーティストとなんだと分かってからはすんなり体に入ってきました。しかしその後メロディの秀逸さや松本隆の日本語詞の世界、大滝詠一の言葉の乗せ方に対する並々ならぬこだわり等、あまりの多側面を含んだ作品であることが体に音が入ってきてから分かるという体験をしました。

一番好きな曲は『春らんまん』という曲で、一見地味ですが実は陶酔の極致。その他にも『暗闇坂むささび変化』での細野・大滝ダブルボーカルや『あしたてんきになあれ』のファンキーさ、そして暑さの中に涼しげな風を吹かせる『夏なんです』まで収録されているという離れ業の連続。現代においてはインパクトはないかもしれませんが、奥深くて懐かしい東京の街並みを彷彿とさせる、一種の風景のような音楽です。