ジャパンはラストの『錻力の太鼓』が傑作なんですが、一作前のこの作品は憂いを帯びていて実はこちらの方をよく聴きます。表題曲は勿論、『Swing』『Methods of Dance』『Taking Islands in Africa』と名曲揃いなんですが、意外と地味な『My New Career』『Ain't That Peculiar』といった曲も徹底的に美しい。デヴィッド・シルヴィアンの美学はここで爆発したんですね。
この後デュラン・デュランなんかを経由してビジュアル系に繋がっていく見た目の演出とは裏腹に音楽面では内省化していく一途をたどる訳ですが、この時点ではまだロマンチズムが全体を覆っていてとても煌めいています。しかも怪しげ。ミック・カーンの存在が実は見逃せなくて、うねるフレットレス・ベースの音階がどこまでも底辺を支えています。
とはいえやっぱりデヴィッド・シルヴィアンの完璧主義がここに極まれり、といった感じでいつ聴いても透明感のある世界に聴く者を連れ去るエネルギーを内包しているいい作品だと思います。