キング・クリムゾン『太陽と戦慄』

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遂に40周年記念エディションを手にしてしまいました。このアルバムはアナログで一時所有していましたが、今ひとつ地味で印象に残っていなかった。80年代のクリムゾンしか知らなかった身としては、当時のライブの『太陽と戦慄パート2』の衝撃が余りに大きくて、その音を聴くために入手したのが契機だったんですが、結局クラシカルな雰囲気についていけずにそのまま放置していたのが現状です。

で、ビートクラブの映像にまたもや衝撃を受け、今回の映像入り2枚組に手を出さずにいられなくなったという訳です。さて、フランク・ザッパを通過した現在の耳にどう響くか。

印象はやっぱりカッコいいですね。CDで初めて聴いたのもありますが、細かい音がクリアに聴こえて、パート1はまるで天国から聴こえてくる音楽のようです。斬り込んでくるギターやその後のポリリズミックな展開も極上品。中盤のボーカル曲は落ち着いて聴けるんですね。この辺りも意外でした。

聴きどころは何といってもパート2ですが、前曲の『トーキング・ドラム』から間髪入れずに入ってくるギターは恍惚感以外の何者でもありません。やっぱり80年代以降のライブでのエイドリアン・ブリューとの掛け合いによるギター2本のシンフォニーの方が派手ではありますが、そこはそれ、オリジナルのオーラが違います。バイオリンの音の荘厳さと共に鳴り続けるロバート・フリップの構築美。その後パート4まで作られる究極のコンセプトはキング・クリムゾンの現在進行形の求道を見るようで、不滅なんだなあと感じます。

ずっと食わず嫌いでいたメタル・クリムゾン。これは『Red』もいくしかないかな。

映像の方も観ました。前半のインプロヴィゼーションは冗長かと思っていたら、これが何ともスリリング。やっぱり単純にツイン・ドラムはカッコいいですね。デヴィッド・クロスもフルートは弾くしバイオリンでピチカートはやるし、と結構多彩な演奏をしています。それにしたってジェイミー・ミューアの枯葉を撒くのは聴こえないでしょ、音では(笑)。

ビル・ブラッフォードの細かい音の刻みは神業のようで、どうやって音を出しているのか観ているだけでは判別がつきません。ロバート・フリップのギターはフレットを図形的に捉えて弾いているのではないでしょうか。単なる音階ではなくて、例えばセルを無秩序に押さえていくようにしながら実はその指の動きはひとつの図形を構成しているように感じます。気のせいかな。あまりギターには詳しくないので。

いずれにしろ非常にインパクトのある映像で、本人達も満足そう。最後のシーンでのジェイミー・ミューアの引きつった瞬きが印象的です。狂気というより乱舞。一種の恍惚が映像を通して伝わって来ます。