キング・クリムゾン『Lizard』

f:id:tyunne:20181027090324j:plain

少し遡って70年リリースの3rdに手を伸ばしてみました。ロバート・フリップのソロ色が強いとの触れ込みですが、趣はジャズ風で管楽器がよく鳴っているのと、アコギの音色が印象的に響きます。重さというより静けさが漂う作品ですね。大分時期によって趣を異にするんだなあ。

一瞬フランク・ザッパの『グランド・ワズー』みたいな感じかなとも思いましたが、随分違って室内交響楽のような落ち着いた感じの音が響きます。キーボードの音もちょっと古いかな。とどめはイエスのジョン・アンダーソンがゲスト参加したタイトル曲で、片面すべてを使った組曲になっています。実はイエスに手を伸ばすかどうか非常に迷っているんですが、またちょっと違う世界が展開されているんですよね、きっと。

クリムゾンの場合、こうした静と動の対比が行われている印象があって、特に静の部分は冗長に聴こえてしまう感覚がありました。展開も穏やかで表現される世界が上品な印象を受けます。その辺は下品なザッパとは対照的ですね。規律を重んじる方なんでしょう。この触れ幅にファンは何を観て来たのか。

プログレの様式美に嫌悪感や近寄り難さを抱いている人は多いんじゃないかと思いますが、それぞれに特徴があってシアトリカルな面とクラシカルな面、そしてクリムゾンのような静と動が同居する不思議な立ち位置のバンド、というより物語でしょうか、そういった側面が時代にしっかりと刻印を残している。荘厳さと静謐さを称えた活動の歴史はまだ続いているというのが凄いところです。なるほど。70年の時点でこういう感じなんだな。