佐藤博『awakening』

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今年亡くなった佐藤博の82年リリースソロ作。こいつはいいですね。

今年一十三十一の新作が出た際に、ライナーの対談で江口寿史が「一時期の佐藤博のよう」と評していたのでずっと引っかかっていました。何となくこの作品はタイトルだけは耳にしていたので手にとりましたが、本人も4作目にして正真正銘のソロ第一作といった発言をしていますので、とりわけ思い入れも強い作品なんだと思います。70年代のきらびやかな雰囲気のキーボードにリンドラムの乾いた音がマッチしてとてもドリーミーな世界観を提示しています。時代を感じさせる80年代的な音をクニモンド瀧口はフェイクで使用したんですね。

この手の音に古臭さを感じずにノスタルジーを感じるというのはかなり屈折しているとは思いますが、それも世紀を跨いで音楽を聴いて来た者の特権という奴でしょう。楽曲自体は比較的素直なもので、アレンジやコード感で浮遊している。ある意味冨田ラボにも近いものがあると思います。山下達郎がギターで参加していますね。

ビートルズのカバーは軽いラテンタッチで一聴すると軽薄ですが時代の隔たりを考慮すると初々しい。発売と同時期に聴いていたらきっと反応しなかったでしょうが、今となっては追悼の意味も込めて懐かしさと共に体に入ってきます。とはいえやはりバラードに尽きるんじゃないでしょうか。とても美しいと思います。