耳鼻咽喉科『偉大なる2年』disc 1

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カーネーションの前身バンドのボックスが出たのは3年以上前。これは買うかどうか当時非常に迷いましたが、年末に中古で発見して今回は迷わず手にしました。音質は悪いですが、カーネーションの原形として充分魅力を携えた記録音源です。以前ゴンチチのFM番組でゴンザレス三上が『月世界紳士』を紹介していて、こんなところまでフォローしてるんだ、と驚いた記憶がありますが、その内容の意外な良さに自分も驚いた記憶があったので、ある程度期待して臨んだところもあります。

XTCからの影響を受けた80年代前半の雰囲気。また『マニア・マニエラ』や『青空百景』を聴いた衝撃をそのまま音に写し取ったような楽曲が並びます。その後有頂天のケラに見出されてナゴムからシングルを出す頃には既にカーネーションに名を改めていますが、こちらはその前の音源たち。女性ボーカルが全面に立っているのかと思ったらそうでもなく、結構直枝政広のボーカルが中心なんですね。当時の交友関係にバービー・ボーイズの杏子がいたというのも意外なエピソードでした。このボックスには対談も収録されています。

耳鼻咽喉科というバンド名は余りにもどうかなと思わせるものですが、ザッパ&マザーズに強い影響を受けたと思しき音源を聴いていると、思い出すのは『アンクル・ミート』のジャケットです。何となくああいう感じのアヴァンギャルドな雰囲気を込めたかったんだろうなと思いますね。ラストに入っている『花の運河で溺れたい』からカーネーションに改名になったようですが、そいつは正解だと思います。それにしても『月世界紳士』の成熟度はなかなか素晴らしい。このあたりの転換がなければ直枝政広がその後息の長いアーティストにはならなかったんじゃないでしょうか。

基本ライブ演奏の録音を集めたものなので音質が圧倒的に悪いですね。トッド・ラングレンの『Something / Anything』にデビュー前の音源が収録されていますが、あれに近いかな。内容的にはマニア向けですが、カーネーションが好きな人には無理なく入ってくる音じゃないかと思います。