デヴィッド・ボウイ『Low』

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やっとここまで辿り着きました。以前持っていて失礼にも売り払ってしまっていた77年の代表作。まるではじめて聴いたかのような感覚で、再度耳にしております。

A面は前作、前々作からの流れを感じさせる比較的ポップなもので、意外と拍子抜けしてしまいます。とはいえドラムの音がまるで違って、ニューウェーブとの絶妙な混ざり具合を感じさせます。でも根底に流れているのはソウル/ディスコ風のリズムでここは安心して聴ける。問題はB面です。

ワルシャワ』から聴ける音の質感は暗いのかと思っていましたが、美しいんですね。確かにサエキけんぞうの言う通り、ジャパンやウルトラヴォックスの源流を感じさせます。『ワルシャワ』を聴いているとまるでジャパンの『バーニング・ブリッジズ』を聴いているかのようです。ブライアン・イーノと共に作り上げたこの世界は当時は前衛だったかもしれませんが、今となっては「美」を感じさせる。陰鬱なものでは決してなく、彩りすら漂う美しい世界観です。

当時ボウイはクラフトワークに大きな影響を受けていたそうですが、その辺りの感覚はむしろA面の方に顕著で、こちらはデジタルを応用したファンクの表現に近い。むしろB面での孤高の世界がやっぱりこの作品の肝になっているように思います。77年という時期にこの世界観をポップフィールドで行ったというのがやはり革新的ですね。今聴いても不思議に古びていない音だと感じました。ロマンティックです。